こはろぐ(仮)

いい加減新しい名前にしよう

魔法少女育成計画(N市)聖地巡礼レポ(前編)

 

・はじめに

 この記事は魔法少女育成計画に登場するN市(上越市)について「原作描写」を軸に、聖地巡礼を行った結果を報告及び考察するものである。

 アニメ版に関しては考察の補足、および後編にて触れる程度なので、アニメ版の聖地巡礼を行いたい場合には他サイトを参考にして頂きたい。

 また作中文章の引用についてはすべて初版に準じているが、@fujkta氏のブログ(※1)によると重版による地名の変更などは無いようである。

 (8/23に発行された電子版においても重要箇所の確認を行っているが地名などに関して大きな変更は見られない)

 

・N市と遠藤先生

 上越タウンジャーナルにて行われたまほいく特集記事(※2)内にて、「原作者の遠藤さんは上越市出身」「宝島社によると原作では舞台を明記していないが、遠藤さんは上越や新潟の町並みをイメージしながら物語を執筆してきた」と述べられている。 

 ただ一方で、アニメ版オフィシャルファンブック/P88にて

遠藤先生「原作のN市については完全に架空の都市ですし、上越市がモデルという訳ではないんですけどね。」

 

橋本監督「担当さんに相談したところ、原作の地方都市のイメージに適した場所として提案していただきました」

 

 

 とやや証言が食い違う場面も。しかし「無意識のうちにそれらしいものになっている可能性はあります。」(同書)との発言もある事からやはりある程度はベースになっているのではないだろうか。

 

 本報告では原作の描写がかなり上越市の特徴をとらえていると感じる他、後述の部分ではかなり正確な一地点を描写しているようにも見える箇所もあるためN市=上越市として議論を進める事とする。

 また「出身」という言葉がどこまでを指すかは不明だが、「新潟の片隅で書いたり食べたりしてます」(美少女が嫌いなこれだけの理由/2011)、「(上越)市内のラーメン屋を制覇することが小さな夢です」(魔法少女育成計画オフィシャルファンブック/2016)という発言から現在も上越市在住、もしくはかなりの頻度で上越市に戻っていると考えられる。そのため無印以降も短編などに何らかの形で上越市の情景が反映されている可能性はある。

  

 

 

・N市概要

 作中におけるN市の描写は

「四年前行われた大合併により近辺最大都市になった港湾都市、N市。市役所を筆頭とした奇抜な建物が乱立する近未来的なビル群、寂れたまま放置された山間部の村落、最新の医療機器を備えた大病院、経営が立ち行かなくなって倒産した大工場、それらが同居する『合併によって無理やり作られた大都市』特有の歪さがあった。」(無印/P10)とある。

 描写としてはおおむね正しいが、実際には原作の描写やアニメよりも更に数段田舎というのが率直な感想である。

 少なくとも、近未来感のある建物は見られず直江津近辺以外はあまり大きな店などが見られず閑散とした印象。棚橋陽真理の言葉を借りるなら「あぁ、田舎だなあ」。

 余談だが直接推測できる文章などは無いものの、上越ジャーナルにて「新潟の街並みをイメージしながら」という言葉があるように近未来的なビル群が立ち並ぶ情景などに関しては新潟駅周辺を参考にしたのではないかと考察できる。

 

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上越市の風景 金谷山スキー場から高田方面(上越中心部)を向いて≫

f:id:steinsue:20191021133629j:plain新潟日報メディアシップから見た新潟市 近未来的なビルが立ち並ぶ≫

 

 

・各魔法少女担当地区一覧予想

 作中の描写や地名をもとに各魔法少女の担当地区を予想した。担当地区が不明な魔法少女が多数いる点(マジカロイド44など)、誰のホームでもない「魔法少女地帯」が存在すると明言されている(BD2巻特典小説/P49)点からあまり拡大解釈をせずに狭い範囲に留めた。

 以下、各魔法少女ごとに推定根拠や訪れた聖地について記述していく。

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 ≪魔法少女たちの担当地区推定範囲 (c) OpenStreetMap contributors"

drive.google.com

 

スノーホワイトラ・ピュセル

「夏場は観光客でごった返す俱辺ヶ浜も、秋になれば閑散とし、さらに日が暮れた後は人通りがほとんどない。」(無印/31P)

「俱辺ヶ浜の釣具屋通りの裏のさらに裏には長い石階段がある。」(無印/234P)

 

 上越市沿岸部の中でも西側、さらに語感が近い「居多ヶ浜」ではないかと考えられる。作中通り、海水浴などに適しているらしく今回の巡礼日では雨の中サーフィンに興じる人も多数見られた。また居多ヶ浜につれて釣具屋の密度も上がり、海浜公園付近には釣具屋が連なっている箇所も確認できる。

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≪居多ヶ浜展望台からの景色 ≫

小高い丘の上にあり、日本海を一望することが出来る。他親鸞聖人上陸の地として記念碑などがある。海沿いの浜茶屋の名前が「さざ波屋」であるという点でもお勧めポイント。

 一方で、「そんな人気のない俱辺ヶ浜海水浴場を一望に見渡せる丘の上の一際大きい鉄塔」(無印/31P)「海水浴場近くに丘があり、そこに据え付けられた一際大きい鉄塔」(epsodes/66P)とある、スノーホワイトラ・ピュセルが待ち合せに使用していた鉄塔は現地調査及びGoogleMapでも確認することは出来なかった。

 沿岸部で他にモデルになりそうな場所を探した結果、候補として挙がったのは「NTT東日本上越ビル」の電波塔?であろうか。「電線がまとめて千切れ飛んだ」(無印/97P)という描写とは矛盾するが(作中では送電鉄塔を浮かべていると思われる)、アニメで登場する鉄塔とされているもの(※3)と外観は似ているのではないだろうか。夜間のライトアップもされておらず、航空障害灯が付くのみで魔法少女の密会には最適であろう。

 

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≪ NTT上越のビル 真下から見るためには入り組んだ路地に入る必要があるため注意 ≫

 

 また、「釣具屋通りの裏のさらに裏には長い石階段がある。」(無印/234P)とある階段においても確認できなかった。一応海岸には階段があるが作中やアニメ描写に準するものはない。上越市民の方の聖地巡礼ブログ(※3)でも確認されていなかったため創作だろうか。

 

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≪居多ヶ浜付近の様子 段数の少ない階段が広域に広がっている≫

 

 また無印以降の聖地として、episodesφ内の「Purimula farinosa」に登場した高校だが「私立高校」「進学校」「科学部、ラクロス部がある」「西側に海が見え、南に歓楽街が見える」といった要素を全て含む学校は上越市内に存在しなかった。(科学部は一校だけ、ラクロス部は存在しない)

 ただ一番要素が多い順で選んでいくとすれば、新潟県直江津中等教育学校(旧 新潟県直江津高等学校)だろうか。進学校であり、立地も居多ヶ浜付近である。(私立要素は物語シリーズの私立直江津高校から?) 他の進学校は高田周辺に固まってしまっているため候補となりえなかった。

「駅前交差点から一足のフルーツパーラー」(episodesφ/130P)に関しては「パーラー・オオタキ」 「佐藤青果店」の二件が直江津付近でヒットしたがあまり高校生が入る店ではないように感じたが例として挙げておく。

 また「魔法少女暗殺計画」「マジカルボーイズエレジー」にて登場した「歩道にあったオブジェ─市長が有名な芸術家に依頼して作ってもらったとかいう代物─」(episodesΔ/240P)「何を模してるとも知れないモニュメント」(episodesΔ/270P)に関しても高田駅を周辺に調査/聞き込みを行ったがそれらしいものは見られなかった。ただ、これだけ上越の街並みを描写していることと同時期に2つの短編でやけに細かい描写がなされている事から何らかのモデルが存在する可能性は否めない。

 余談ではあるが「ゾンビウェスタン」によると俱辺ヶ浜鳩田亜子が住み暮らしている場所であり、カラミティ・メアリに虐殺(?)された場所は上越市国府小学校であろう。

 

 

 

リップル&トップスピード】

リップルが任されたのはかつて城下町として栄えた地域の中央に位置する中宿。トップスピードの担当地域は北側の北宿。当然隣合っている」(無印/54P)

「中宿も北宿も、人口密度はそれなりにあるが、かつて城下町だった尚武の気風はすでになく、どちらかというとのんびりしている」(無印/70P)

 

 これらの描写から基本的は高田城付近であると考えられる。また、「今にも倒れそうな駅前のビルは市営の立体駐車場だ。」「電車は仲宿を通り越し」(無印/127P) 「中宿には通称『上道』と呼ばれる国道x号線が通っている。」(無印/193P)という描写から仲宿=高田駅東側周辺=本町から上新バイパスの間であると推定する。

 北宿に関しては火防道路(無印/162P)の存在(儀妙川を挟む道路らしい)(※4※5)と、担当地区が隣りあっていることから幸町から東本町付近であるとする。


 

高田駅

 高田駅はホテルなどの紹介分から上越市の中心部であるらしいが、あまり栄えている様子は見られない。「今にも倒れそうな駅前のビル」である市営の立体駐車場が北側に併設されている。

「乗り換えを含めた三十五分感、華乃は電車に揺られている。」(無印/127P)とあるようにこの駅を通過する妙高はねうまラインの列車を細波華乃は利用しているのだろう。

 アニメでは姫川小雪の通学シーンとして登場。

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高田駅昼/夜、市営駐車場および駅前の様子。人通りはかなり少ない印象≫

高田公園噴水広場』

 「広場中央の大噴水は単調なリズムで水を噴き上げていた。もはやライトアップされることも軌道が変化することもない。」(無印/180P)

 高田公園内にある噴水。原作と比べて公園の片隅に追いやられてしまっている感は否めないが、大きさは想像以上である。原作では公園内の多目的ホールから見下ろしていたが、実際にはそのようなホールは存在しない。

「月に一度午後十時から(中略)ライトアップが行われる」とあるが筆者が訪れた6月下旬でもライトアップはされていた。ただ上段の噴水は水が出ていなかった他、20時と21時の区切りに立ち会ったが特に変わった様子は見られなかった。

 検索をかけると上段も水が出ている写真が出てくるので何か条件があると思われるが、残念ながら詳細は得られなかった。

 

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≪公園の噴水夜/昼 予想に反してかなり大きい。写っているのはファボさん≫

 

国道18号線

 「中宿には通称『上道』と呼ばれる国道x号線が通っている。呼び名の通り、地面から見て十メートルは上を通る国道は速度制限が一般車にしては緩く~(省略)」(無印/193P)

 実際に他の道と比べて路面が高くなっており、信号がないため運転していて高速道路にとても近い感覚だった。アニメでは国道ではなく高速道路へと変更されていたが外観はあまり変わっていない。(高速ICも合流してくるためほぼ高速と見ても良い)アニメで登場したラブホテルらしき外観の建物は、恐らく創作か近くにある「ラブトマト」あたりがモデル。

 上越市を南北に跨ぐ道路であるため、妙高高原駅から直江津駅方面への移動ルートとして便利。

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国道18号線(車内から) 他の道とは完全に分離していて、低い所でも4mほどの高さが≫

 

『アートホテル上越

 「カラミティ・メアリは市内最大の宿泊施設であるホテルプリーステスの屋上から国道を見下ろしていた」(無印193P)

カラミティ・メアリが国道X号線を狙撃したポイント。

 高田駅から徒歩3分ほど、地上11階客室数198室で「市内最大の宿泊施設」といっても問題無いだろう。

 国道X号線までの距離は直線距離で2.74km(Earthアプリで計測)であるが、「アカネと愉快な魔法少女家族」にてアカネが3km先の御札を視認している点、「カラミティ・メアリの魔法によって威力、弾速、正確さ、射程が上昇する」(無印/193P)点、人間においても3.5kmまでは狙撃の記録がある(※6)ため大きな矛盾は無いだろうと考えらえる。

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『大和上越店(現イレブンプラザ)』

 「前方右斜め七十度にある五階建てビル─確か百貨店だったか─の窓が割れ、中から何かが大きな何かがのっそりと出てきた。」(無印/209P)

 現時点では残されていないが2010年4月25日に閉店し、2011年10月24日に解体(※7)が始まった五階建てのデパート。

 アートホテル上越から南に500mほどの距離である。直線距離上には(執筆時期であろう11年後半から12年前半は)遮蔽物が無く(後述)、それほど矛盾はない。

 屋上には小さい遊園地が存在していたらしく(※8)、「マジカルイリーガルガール」や「スノーホワイト育成計画」でリップルがリオネッタやフレデリカと対峙したのも恐らくここであろう。

 現在は解体後に平屋の建物へと建て替えが行われ、現在は面影を見ることは出来ない。

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≪イレブンプラザ(反対車線)からアートホテル方面(手前の大きな建物はあすとぴあ) この風景の中を防火扉が飛んでいた≫

 

【無印世界観と上越市の時系列において】

 19年現在、旧大和上越店からアートホテルを見ることは出来ない。これは16階建ての複合ビル「あすとぴあ」が建設されているためだ。

事実に基づけば防火扉を飛ばしてもあすとぴあに阻まれて届くことはないが、無印執筆の期間だけ原作の位置関係が成立してたのだ。

  • 前提条件としてメアリ戦の防火扉コースはほぼ間違いないとする。過去のニュース記事によるとこれらのビルは、南から大和上越、長崎屋ビル(現あすとぴあ)、アートホテルの順番に並んでいた

  • 2010年10月、以前から閉店していた旧長崎屋ビルの解体が始まる(※9)

  • 2011年6月、旧長崎屋ビル解体完了。同月あすとぴあ着工開始(※10)

  • 2010年10月、大和上越ビル解体開始(※11)

  • 2013年3月イレブンプラザ(旧大和上越)オープン(※12)

  • 2013年4月あすとぴあ高田完成。現在の並びになる。(※13)

  • 2013年4月episodesスイムスイム短編にてあすとぴあ高田に言及

 

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 この表を見ると、「美少女」と無印の発行期間の間(図における④)においてちょうど作中描写と同じ配列になっている。また新たに建設された「あすとぴあ高田」も同じタイミングで書かれたepisodesに似たような描写がされており(後述)、遠藤先生の上越愛が伺える。

 

【ルーラチーム】

「坂の上の廃寺さ、魔法少女が集まってるって噂あるの知ってる?」(16人の日常/175P)

 

 無印やepisodesでは「西門前」表記であったが、15年発行のFANBOOK収録「トリック・オア・マジカルガール」や16年発行「16人の日常」では「門前」表記にされている。王結寺の説明においても両地名が使われているため別地域というわけでもなさそうだ。これらの表記ブレに関しては電子書籍においても統一がされていないため誤植か意図的な物かは不明である。

 上越市に門前とつく地名については「上門前」「中門前」「下門前」の三か所である。「門前」という表記は下門前地区の店名などで見る事が出来るが(例.門前の湯)が本文では高田駅西側の「寺町」と仮定して進める事とする。また以後原作内のルーラチーム担当地域は「西門前」表記で統一する。

 「西門前」描写としては「ここは寺の多い門前町で、ちょうど坂を上り切って国道に出ようとしている辺り、今いる場所は朽ち果てかけている寺の前だ。」(epsodesΔ/55P)「結構な斜度があった。若い芳子でも無事ではすまない。」(epsodesΔ/57P)と寺が多く急な坂のある土地柄である事が伺える。

 名前的に近く、「門前」と表記する店が見られる下門前と候補地とした「寺町」を比べると、下門前は寺の数は比較的少ない傾向にあり、地形的にも起伏に乏しい。また先駆者ブログ(※3)においても(アニメ版)似た寺は見られず、寺町の可能性を指摘する記述がなされている。

 一方で寺町は山側に位置しているため山も近く、「転べばケガしそうな」坂道が存在する余地はある。また寺の密集具合は特異的であると言える。この地区が「立派な構えの大きな寺からひっそりと佇む小さな寺まで数多くの寺が軒を連ねていた。」と描写されるように寺が連なっている事は地理院地図などを見ると一目瞭然である。

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≪下門前(上)と寺町(下)付近の標高差比較 地理院地図より引用≫

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≪寺町周辺の寺院分布図、極端に密集している様子が見られる 地理院地図より引用≫

 

 また「西門前」の特徴として「西門前町の……一階にコンビニがあるマンションの屋上」「あーあそこかな。スクランブル交差点を駅側に折れてちょっと行ったところにある」(episodes/163P)という描写があり、スクランブル交差点があることが伺える。

 上越市内におけるスクランブル交差点はおそらく高田駅前のそれであろう。実際に上越に関係するいくつかの資料において(※14※15※16)確認できる「スクランブル交差点」はここのみである。

 この交差点から駅側(高田駅)に折れた所には一階部がコンビニになっているあすとぴあが存在する。このコンビニは建設当時から存在するため、条件としては問題ないだろう。

 厳密にいうとあすとぴあは「中宿」内に存在している事になるが、あくまで参考程度であろうという点と無印執筆時点では存在しなかったビルであることから一定の緩さを持ちたい。また「西門前」から「名将山」に抜ける際に後述の「城南地区」を通過する点、「項島台ダムを選んだのに地元である」(無印/266P)という記述から寺町付近が妥当であろう。

 ただ一方で「目の前には石垣が壁がそそり立っている。かなり特徴的な場所だ。N市内で石垣が壁になっている場所は北公園近くしかない。この壁を上って上に行けば北公園に出る。そこから門前町は一足だ。」(16人の日常/99P)と描写されている石垣及び公園については見つけることが出来なかった。 

 上記の根拠をもとに今回の巡礼では寺町を探索したが、一目で廃寺であるという寺は見つけることが出来なかった。一方で寺同士であっても明らかに手入れ(予算?)の差が激しい場所であると感じたため、設定の一因となっている可能性は高い。

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≪寺町内で見つけた廃寺?あまり手入れされてる気配は見られない≫

 

 また「山側の急斜面」という要素に絞ってのみ捜索を行うと「医王寺薬師堂」いう寺を発見することができた。(※17)

 寺町からは外れてしまっているが、急な坂が近く人気が少なくひっそりと佇んでいるとう表現がしっくりくるような場所であった。

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 ≪医王寺薬師堂 外観というよりは雰囲気が似ている程度である≫ 

 作中の王結寺はこういった要素から組み立てられた創作ではないだろうか。

 

『金谷山展望台』

 医王寺のある山の頂上。小さなスキー場になっている他、バイク乗りが集まるスポットになっているようだ。上越市一帯を見下ろすことが出来る。

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【スイムスイム】

「待ち合わせ場所はどこでもよかった。縄張りを主張するほど多くの魔法少女はすでになく、夜ともなれば人気がなくなる場所は市内に点在している。スイムスイムが項島台ダムを選んだのに地元である以上の理由はない。」(無印/266P)

 

 上越市内にダムは全部で4つ存在しているが「円状にくり抜かれて石畳が敷き詰められ、木製のベンチが数台設置されていた」という描写に適するように、公園化されているダムは(衛星写真から確認される限りは) 正善寺ダムのみであり、上越市街から最も近いダムもここである。

 また先駆者ブログにもあるようにアニメのロケ地として選定されている。

 山奥であるため携帯電話(au)が圏外であったことと、夜間は街灯が数本灯っているだけで非常に暗いため巡礼の際には注意して頂きたい。

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≪善正寺ダムの様子 アニメ描写そのままの風景である 夜間は想像以上に暗いため注意≫

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≪近くの小山から(パノラマ撮影) 左のベンチはアニメでは配置が変更されていた≫

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≪持ちんだリップルフィギュアでの撮影 丁度紫陽花のシーズンであり、良く映えた≫

 

【ヴェス・ウィンタープリズン&シスナーナナ】

「工場の方で魔法少女を見た人がいるんだってさ」「工場ねえ」「木挽町の潰れた工場だよ」(16人の日常/178P)

 

 この二人の担当地区(?)に関しては「木挽町」「材木屋通り」といった地名と廃工場という情報しか得られなかった。「木挽」は「大鋸を使用して挽き切る事」という意味であり、「木挽」「大鋸」という地名は日本に点在している(※18)

 上越市にも「大鋸町」という地名があるがこれは旧名であり、現在では仲町(中宿)である。(※19)

「大鋸町」には工場が無く(一応近隣に「大島農機」の工場があるが閉鎖されていない)、会社らしい建物もあまり確認できなかったため、本編との関連性は不明である。

このため、実在の大鋸町はあくまで地名の由来程度であり、「シスターナナがカラミティ・メアリのシマに入って撃ち殺されそうになった」という描写とアニメ版の聖地から今回は城南地区の南ではないかと考える。

 また、「サークルの王子様」内の描写から強いて聖地候補を挙げるならば上越教育大学ではなく新潟大学ではないだろうか。

新潟大学では上越教育大学と違い数学科(※20)が存在し、サークル棟もプレハブ小屋になっており、変わったサークルや同好会があるなど、一定の緩さがあるので雰囲気としては似通っている印象。

 ウィンタースポーツ系のサークルとしては、「基礎スキー部」「BOARDS -スノーボード-」の2サークルが現存している。

 亜州雫とシスターナナが行った映画館だが、上越市新潟市のどちらにも「駅前の少女像」(16人の日常/P150)(※22※23)と映画館があるが、「駅前の少女像」から映画館まで徒歩で歩いたことを考えると新潟市の方が妥当であろう。(上越市の場合、直江津駅から最寄りの映画館ま4.4km徒歩55分である)余談だが新潟駅から徒歩10分ほどで所謂B級映画や古典的な作品を上映している「シネ・ウインド」という映画館がある。

 

【カラミティ・メアリ】

「街並みがどこよりも盛大に光り輝いているのはカラミティ・メアリの城南地区だろう。あそこは不夜城だ。」(16人の日常/P41)

 城南地区はおそらく実在する地名の「南城」のもじりであろう。だが、実際の南城には陸上自衛隊高田駐屯地、高田高等学校、高田南城高といった施設が広がっているため歓楽街では全くない。また、基本的に住宅地であるため「歓楽街の中心部、ビルに囲まれる中に、ぽつんと穴が開いたように人が少ない空間がある。」(epsodesΔ/37P)と描写されているビル群や「城南公園」も存在しない。

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≪金谷山から見た高田方面 中央の校舎は高田高等学校≫

では逆に歓楽街はどこか…と調べていくと高田駅南の一角が該当するが「不夜城」という表現には程遠い感想。

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高田駅南の歓楽街 基本的には似た雰囲気の道が続く≫

 

「極道天使稼業」のセメント工場(16人の日常/86P)などに関しては残念ながら位置が特定できる描写が無かったため不明。

「上海系金幇梅」や「地元鉄輪会」などの反社会勢力についてもモデルを探した結果、暴力団絡みのニュースは多少発見できたが、正確な系譜を辿ることが出来なかったため、今回は見送りたい。

 

 

【マジカロイド44】

 担当地区の描写が全くないため、詳細は不明。

 彼女単体の聖地で唯一特定できたのは、「駅で乗り換える際、鼻腔をくすぐる立ち食い蕎麦の匂いに対し、三十回中二十九回は耐えて見せる」(episodes/24P)と描写されている立ち食いソバ屋のみである(※24)

 BD2巻特典小説の「魔法少女vs鮫」においてはアウトサイダー二人が侵入した「内防」は直江津港東ふ頭(※25)のいずれかだろう。火力発電所の描写が無いところを見ると第二東防波堤の向かい、もしくは防砂堤だろうか。作中描写にもあるように立ち入り禁止区域でもあるのにも関わらず、釣り人に人気のスポットであり、定期的に会場保安庁の見回りも行われている。(※26)

また、西側の沖防やクレーンはウィンタープリズンやラピュセルが鮫と戦った際のモデルであろう。

 

 

【クラムベリー】

 「高波山の山頂近く、建設途中で打ち捨てられたリゾートホテルを住みかとし、クラムベリーは、誰にも悟られることもなく半年以上暮らしている」(無印/P49)

 

 クラムベリーが根城としていた高波山は「場所はN市内では高波山に次いで標高の高い船賀山。」(無印/P244)という描写から上越市南部、飯山市との境にある「黒倉山」(標高1242m)であると推定される。この山の北側の麓「新井駅」付近には三か所の採石場があるため、いずれかの採石場でvsウィンタープリズン戦があったと思われる。今回は遠方であることと、企業私有地であるため立ち入ることが不可能あると判断したため、巡礼は行わなかった。

 山頂付近の打ち捨てられたリゾートホテルは確認できず、ほぼ創作である。おそらく妙高市が隣接していることもありスキー場関係のホテルが廃業、廃墟化しているのを設定に盛り込んだのだろう。

 スイム戦が行われた船賀山だが「高波山に次いで標高の高い」(無印/P244)という記述のみで推定を行うと「菱ヶ岳」であろうか。ただこの地点では最寄り駅から10km以上離れている他、スキー場になっているため整合性は低い。

また、船賀山描写として「項島台駅から反時計回りで通りを抜け、そのまま坂を上り続ければ入り口に出る」とあるが「項島台」という地名はスイムvsリップル戦があった「項島台ダム」と同一である(2019年10月現在電子書籍においても確認済み)。このことから船賀山=項島台ダム(善正寺ダム)付近であると考えても良いのではないか。

 この推定に基づくと山の南側にはスキー場が整備され(金谷山スキー場)、北側は糸魚川方面に抜ける国道であるため人あまり整備されていない。と強引にだが解釈できる。

 余談ではあるがアニメ化の際に付けられたあだ名である「森ゴリラ」であるがなんと新潟県柏崎市に「森のゴリラ」というラブホテル(廃業済み)が存在する。

 

・終わりに

 今回の考察はあくまで一個人の考察に過ぎない上、土地勘が乏しい人間によるものなどであるが、遠藤先生による上越愛の一端を垣間見ることが出来た。

 上越は港湾地区、歓楽街、城下町、山間部とバリエーションに富んだ風景が存在し、これらによって様々なエピソードが紡がれていると実感するとともに、まだまだ物語のフックになりそうなスポットもあるように感じられた。今後も上越の変化とともに新しい短編などが出来ることを期待したい。

 今回の調査はどうしても日数が限られたこともあり、不備が多々あると思われるため、訂正箇所を見つけた場合や内部事情に詳しい方がいられた場合には是非連絡を頂きたい。

primevalarc.hatenablog.jp

・引用文献

※1 マジカル自分用メモ 魔法少女育成計画の初版から増刷時に修正・変更された箇所

http://magimemo.hatenablog.com/entry/2017/08/12/220320

※2 上越ジャーナル TVアニメ「魔法少女育成計画」の舞台は上越市

https://www.joetsutj.com/articles/39706958

※3 晴れ、時々オタク 上越市民なので「魔法少女育成計画」の舞台探訪・聖地巡礼してきた。

http://yoshiken.hatenablog.jp/entry/maho-iku-seichi

※4  ☆ 床屋サン行こ ♪  ~ カットサロンまるやま ~  市街地火災防御訓練 ☆彡http://blog.jcan.jp/cut-maru/52245/

※5  上越タイムスニュース  わざと支柱を壊す商店街駐車場で多発

http://www.j-times.jp/news.php?seq=3333

※6 世界最高のスナイパーはカナダ兵 世界記録BEST5に3人ランクイン

https://news.livedoor.com/article/detail/13264980/

※7 大和上越店ビルの解体工事始まる

https://www.joetsutj.com/articles/51807971

※8 本町めぐりツアーinありがとう大和 (大和屋上編)

https://blog.goo.ne.jp/miyanao5630/e/8e2f481a50811a8f18a6df16b77d6928

※9 長崎屋ビル再開発 アスベストで5か月遅れる

https://www.joetsutj.com/articles/51714921

※10 16階の新ビル10日着工 旧長崎屋解体終了

 https://www.joetsutj.com/articles/51731896

※11 大和上越店ビルの解体工事始まる

https://www.joetsutj.com/articles/51807971

※12 大和上越店跡に「イレブンプラザ」がオープン   https://www.joetsutj.com/articles/52024785 

※13 再開発ビル「あすとぴあ高田」が本町にオープン

https://www.joetsutj.com/articles/52027296

※14 

上越地区の浪人生はコチラ!東進 長岡駅前校の姉妹校、東進 高田駅前校

https://toshin-nagaoka.com/2017/08/22/%E4%B8%8A%E8%B6%8A%E5%9C%B0%E5%8C%BA%E3%81%AE%E6%B5%AA%E4%BA%BA%E7%94%9F%E3%81%AF%E3%82%B3%E3%83%81%E3%83%A9/

※15 上越タイムスニュース 大みこしが街中練る 日枝神社で春祭り

http://www.j-times.jp/news.php?seq=844

※16 自転車はここを 走る! - 国土交通省北陸地方整備局

http://www.hrr.mlit.go.jp/takada/road/jitensya_ru-ru.pdf

※17 上越市: 医王寺薬師堂

https://www.niitabi.com/jyouetu/iou.html

※18 木挽 - Wikipedia 

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9C%A8%E6%8C%BD

※19 【公式】地名ハンターα #003上越市旧大鋸町

https://www.youtube.com/watch?v=I6MXcQDDTYY

※20 新潟大学理学部 数学プログラム
https://www.sc.niigata-u.ac.jp/sc/program/math.html

※21 新潟大学 サークル紹介

https://www.niigata-u.ac.jp/campus/activity/circle/

※22 北陸の私鉄 直江津駅
 http://www.atw.ne.jp/~suwa_h/HokurikuEki/Eki/Naoetsu/Naoetsu.html
※23 鉄道雑学研究所北陸支所 駅前の銅像(女性像ほか)その3

http://nacl.sakura.ne.jp/dozomonument/dozo11.htm

※24 上越ジャーナル “メギス天” 入りのそば 人気です 直江津駅北口「そば処 直江津庵」に登場

https://www.joetsutj.com/articles/52100117

※25 新潟県 直江津港の施設の概要

https://www.pref.niigata.lg.jp/sec/jouetsu_naoetsu/1200589257478.html

※26 直江津港の立ち入り禁止区域内で釣り 107人に注意と退去措置

https://www.joetsutj.com/articles/75481979